ニンテンドーDS Liteは、悲しき運命のハード?
2005年から2006年にかけての年末年始商戦の主役はどう見てもニンテンドーDSだった。DSを発売している任天堂はもともと、ファミリー向けソフトが売れやすい年末年始商戦を得意としているが、この年末年始ではその強さが際立っていた。その象徴として、DS本体が発売から1年以上経っているにもかかわらず品薄になったり、ソフト売上の上位を独占したりと、ここ数年のゲーム業界の流れをも変える勢いすら感じられる。
その要因はやはりソフトのヒットが大きいと考えられ、本体の発売前から注目されていた『nintendogs』や、『どうぶつの森』や『マリオカート』などで既存のファンと新規ユーザーの両方を取り込んだほか、ブームの火付け役となった『脳を鍛える大人のDSトレーニング』や『やわらかあたま塾』などの、これまでのハードでは生まれることのなかった魅力的なソフトを本体発売から1年足らずで発売してみせた。その結果、ソフトではミリオンヒットが次々生まれ、ハードも2005年12月19日〜12月25日の1週間で61万4748台を販売し、PS2の発売週の63万0552台に迫る数字を叩き出した(ちなみにDSの発売週は44万1485台、数字はいずれもファミ通調べ)。もはやブームといってもいいくらいの加熱ぶりである。
そんな中、2006年1月26日、任天堂はニンテンドーDSの上位機種「ニンテンドーDS Lite」を発表した。従来型と比べ重さが軽くなったほか、バックライトの明るさが調整可能になったなどの違いがある。しかし、いってみればマイナーチェンジでしかない上位機種が、こんなに早く発売されることにはいくつか不可解な点もある。
主なハードのチェンジモデル発売時期(発売日は日本のもの)
ハード名
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発売日
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発売間隔
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ゲームボーイ → ゲームボーイポケット
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1989/04/21 → 1996/07/21
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約7年3ヵ月
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プレイステーション → PSone
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1994/12/03 → 2000/07/07
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約5年7ヶ月
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プレイステーション2 → 薄型プレイステーション2
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2000/03/04 → 2004/11/03
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約4年8ヶ月
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ゲームボーイアドバンス → ゲームボーイアドバンスSP
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2001/03/21 → 2003/02/14
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約1年11ヶ月
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ゲームボーイアドバンスSP → ゲームボーイミクロ
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2003/02/14 → 2005/09/13
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約2年7ヶ月
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ニンテンドーDS → ニンテンドーDS Lite
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2004/12/02 → 2006/03/02
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約1年3ヵ月
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ゲーム機の中には上表のように本体がモデルチェンジするケースは珍しくはないが、ゲームボーイアドバンス以降の任天堂の携帯ゲーム機ではこのモデルチェンジのサイクルが早いのが分かる。しかも、ゲームボーイアドバンス(GBA)からGBASP、GBASPからGBミクロのように大きく形が変わっているのならともかく、今回のDSからDS Liteはそれらに比べれば明らかなマイナーチェンジ。本体が深刻的ともいえる品薄になっている時期にわざわざ発表する必要はあったのだろうか。
また、モデルチェンジによる価格改定も、最近の携帯ゲーム機では値上げの傾向にある。GBAからGBASPの場合は8800円から1万2500円に、GBASPからGBミクロの場合は9800円から1万2000円になっている(いずれも上位モデル発売時期の価格)が、今回のDSからDS Liteでも1万5000円から1万6800円と値上げしている。任天堂の携帯ゲーム機では過去最高の価格をDSで更新していたが、DS Liteはその価格をも上回ることになる。さらなる普及を目指すなら、せめてDSをDS Liteの登場と同時に値下げするような動きがあってもいいのではないだろうか。
このDS Liteの登場にはさまざまな理由があると考えられるが、やはり一番大きいのは他のハードの「ふがいなさ」の穴埋めであろう。任天堂はDSの発売時には「DS、GBA、GC(ゲームキューブ)の3本柱で展開する」との方針を示していたが、GCの市場は日本ではもうかなり縮小してしまい、GBAも結局はDSに市場を脅かされる形で縮小する結果となった。その現状で主力のDSに注力するのは分かるが、それでもDS本体の品薄に対してお詫びを公表して(2006年1月5日)から1ヶ月もしないうちに新ハードの発表では、むしろDS Liteがこの品薄の原因の一端になっていたのではとの憶測すら流れても不思議ではないだろう。DS Liteをどれくらい前からこの時期に発表しようとしていたかは定かではないが、少なくともDS本体の品薄の現状を見てから発表時期を考えることはできたはずで、無理にこの時期に発表する必要はないと考えるのが自然であろう。
それではなぜ無理にでもこの時期に発表して3月に発売するのか。それはおそらくは今年度の売上を気にしてのことだろう。他のふがいないハードの穴埋めももちろんあるとは思うが、DSの好調ぶりも顕著なのは実は日本市場のみで、特に日本の2倍以上の市場規模がある北米では2005年10月〜12月のDS本体の出荷数が243万台と、日本の358万台を大きく下回っている。北米などではまだGBAの人気がそれなりに健在で、新規にPSPなどが市場に加わった影響などもあるが、DSのコンセプトの浸透が日本に比べると弱いという印象を受ける。しかしそれらの市場へ向けた次の提案がDS Liteである、という考え方は普通ではなく、DS Liteをこういう目的で売ろうというビジョンがこれらの市場には全く見えてこない。結局は決算を見据えた小銭稼ぎということになってしまうような気がする。
しかしながら、少なくとも日本でのこのDSのヒットは、最近のゲーム業界のさまざまな悪い流れを断ち切る起爆剤としての期待も大きく、特に一部のゲームで普段はゲームを全くプレイしない人を振り向かせたという功績は大きいと考える。そのまだ普及段階で発売されることになるニンテンドーDS Liteは、おそらくその後しばらくして発売されるであろう、さらなる上位機種に主役の座を奪われてしまう悲しき運命のハードだと個人的には思っている。でもそれがこれからの携帯ゲーム機の売り方のスタンダードとするのであれば不思議なことではないのかもしれない。とりあえずはこのDS Liteというハードが、日本でどれくらい受け入れられるかに注目することにしよう。
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