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 ゲーム系企業における成果主義の是非


 近年、一般企業の報酬体系は「働いた年数に応じて報酬が増えていく」といういわゆる年功序列型から「実力のあるものがたくさんの報酬を受け取ることができる」という成果主義を積極的に取り入れる動きが強まっている。新興の企業ではほとんどが成果主義を採用し、古くからの企業の中にもこうした動きは年々強まっている。

 この成果主義のメリットは簡単に言えば、一律ではない報酬によって社員のやる気を喚起させ、会社の成長につなげていくことにあるわけだが、これがあまりに極端であると成果を残したものだけが生き残り、成果を残せないものは切り捨てられるという危険性もはらんでいる。しかし、それでも企業の将来という観点から見ればメリットも多く、これからさらにこうした動きが強まっていくのは自然な流れともいえるだろう。

 そしてその動きはゲーム系企業にも例外ではなく、もうすでにかなり広まっているように感じられる。どちらかといえば流行の先端に敏感でなければならない業種のため、いつまでも古い考えにとらわれている企業はすぐに取り残されてしまう。その結果としてゲーム業界でも企業間の合併が相次ぎ、企業間の、ひいては同じ企業の中の社員の間にも競争意識は高まってきている。

 しかし、そんな成果主義の考え方は実際は企業が自分たちを守るための言い訳をしようとしているのに過ぎず、ゲーム業界に限定して言えばユーザーのためを思ってしているようには到底思えない。

 ゲーム系企業の中でかなり大規模にこの成果主義を取り入れた例としてナムコが挙げられる。ナムコといえば、創業50年を超えるゲーム系企業の中では老舗であり、今も第一線にゲームをリリースし続けている。そんなナムコが取り入れた成果主義というのは、簡単に言えば「売れるゲームを作った人の報酬を多くし、そうでない人の報酬を減らす」というものだ。

 ナムコのようにハード(本体)を作っていない会社では、ソフトの売れ行きが企業の業績の良し悪しをかなり左右する。そこに成果主義を取り入れることで、自分が関わった作品が売れるようにがんばってソフトを作ればそれなりの報酬を受け取ることができる、という会社にも社員にもメリットがあるようなこのやり方は一見理にかなっているように思える。

 しかし、結果としてこの成果主義がもたらしたものは想定とは違うものであった。それは、「人気作品へのリリース集中」。つまり、社員の考えとしてはすでに安定した人気作品を持っている部署に行くことで、自分が関わったソフトの売上の安定を期待でき、それによって自分の報酬も安定させようというわけだ。

 この考え方は当の社員としてみれば当たり前で、わざわざこれから新規の面白いゲームを作ろうとして売れるか分からない危ない橋を渡るより、売上の見込みがある程度見える安定作品の続編を作るほうが自分の報酬を多くできる可能性は高い。しかし、その結果が招いたものは、はたして最終的にゲームを楽しんでもらうユーザーのためになっていることなのだろうか。

 ナムコの人気作品の一つに『テイルズオブ』シリーズがある。1995年の『テイルズオブファンタジア』以来、独特の世界観とアクションを取り入れた戦闘が特徴で、今も人気が高いRPGである。このシリーズは登場からしばらくのうちはおよそ1年半〜2年くらいのペースで据え置き機で最新作をリリースし、その間に携帯機などで外伝を発売するというリリースペースであったが、2002年ごろからリリースペースがどんどんと早まってくることになる。

『テイルズオブ』シリーズ歴代作品の発売日(廉価版や家庭用ゲーム機以外は除く)
機種
ソフト名
発売日
SFC
テイルズオブファンタジア
1995/12/15
PS
テイルズオブデスティニー
1997/12/23
PS
テイルズオブファンタジア
1998/12/23
GB
テイルズオブファンタジア なりきりダンジョン
2000/11/10
PS
テイルズオブエターニア
2000/11/30
PS
テイルズオブファンダムVol.1
2002/01/31
GBA
テイルズオブザワールド なりきりダンジョン2
2002/10/25
PS2
テイルズオブデスティニー2
2002/11/28
GBA
テイルズオブザワールド サモナーズリネージ
2003/03/07
GBA
テイルズオブファンタジア
2003/08/01
GC
テイルズオブシンフォニア
2003/08/29
PS2
テイルズオブシンフォニア
2004/09/22
PS2
テイルズオブリバース
2004/12/16
GBA
テイルズオブザワールド なりきりダンジョン3
2005/01/06
PSP
テイルズオブエターニア
2005/03/03
PS2
テイルズオブレジェンディア
2005/08/25
PS2
テイルズオブジアビス
2005/12/15
DS
テイルズオブザテンペスト
2006/04/13
(注:『テイルズオブザテンペスト』はのちに発売日が6月8日に延期)

 2002年11月にPS2で『テイルズオブデスティニー2』を発売した後、次の据え置きゲームであるGC『テイルズオブシンフォニア』は約9ヶ月という間隔でリリースされる。その約1年後に同作品がPS2に移植されて、そのおよそ3ヵ月後にはPS2で『テイルズオブリバース』が発売された。そしてその約8ヵ月後にはPS2『テイルズオブレジェンディア』が発売され、そこから次のPS2『テイルズオブジアビス』はなんと4ヶ月弱という間隔で発売に至った。もちろん今挙げたのは据え置き機のいわゆる正統続編といわれるものだけで、その間にこれらとは別に外伝や移植作品も発売されているし、最近ではオンラインのサービスも始めようとしている。いくら人気が高い作品であるとはいえ、このリリースペースはもはや異常とも言える状態だ。

 この状況に至った原因は、もはや改めて書く必要もないだろうが、明らかにかかわるスタッフの数が多いためである。そしてそれを引き起こした一端は確実に成果主義という流れであるといえるだろう。『テイルズオブ』シリーズのスタッフはいくつかのチームに分かれており、全作品を全員で作っているわけではないので、このリリースペースが実現している。しかしながらこの状況、ユーザーにとって必ずしも歓迎されるべきことなのだろうか。

 懸念されるのはこのリリースペースが招く『ブランドの崩壊』である。いくら人気がある作品でも、異常なペースでリリースされてはいつかは飽きられてしまう。それは少し例えが悪いかもしれないがオリンピックが毎年開催されるようなもので、4年に一度だから重みのある金メダルも、毎年開催では明らかに重みが薄れてしまう。4年に一度だから時間をかけてしっかり準備等ができるわけで、毎年開催では設備に不備が出たり、選手のコンディションも整えにくくなる。そのあたりはしかし、『テイルズオブ』シリーズでは、多くのスタッフが関わっていることもあり、またシリーズの固定ファンもかなり多いことなどから、このリリースペースでも今の所、ブランドが崩壊している様子はなく、現時点の最新作、PS2『テイルズオブジアビス』は歴代作品と比べてそれほど遜色のない53万7936本を売り上げている(2006/01/29まで、ファミ通調べ)。

 しかし繰り返しているように、このリリースペースはユーザーが求めたものなのだろうか。クリアーするのに数十時間はかかるゲームを1つのシリーズで年に何本も出すことが、ユーザーを喜ばせる最善の方法だと考えているのだろうか。実際、この状況を喜んでいるユーザーもいるはずだが、それ以上に、ファンであっても心配しているユーザーも多いのではないか。

 個人的には「ナムコは今すぐ『テイルズオブ』シリーズの乱発を止めるべきである」などというつもりはないし、ナムコをここで取り上げたのもあくまで例であって個人的な恨みなどはもちろんない。しかしナムコを含めたゲーム系企業にこうした傾向が強まって、発売されるゲームが人気作品の続編ばかりになってしまったら悲しいことであると思う。実際、すでに日本では新しいゲームがあまり売れず、乱発ではないにしろ人気作品の続編ばかりがリリースされる傾向にある。それを引き起こしたのはユーザーの嗜好変化によるゲーム離れというのもあるだろうが、それ以上にゲーム系企業の努力不足があるように思える。そしてその一端に、企業が安易に成果主義を取り入れたことがあるような気がしてならない。新しいゲームがすぐに利益につながらないからといって続編や過去作品の移植に頼っているようでは、そのときは良くても将来に対して希望を持つことはできない。

 ゲームは人々に夢を与えてくれるもの。ゲームを作っている企業も、もう少し夢を持って欲しいと思う。
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