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 ニンテンドーDS Liteの販売戦略における任天堂の誤算


   2006年3月2日、新ハード「ニンテンドーDS Lite」が発売された。この「DS Lite」はすでに発売中の「ニンテンドーDS」の上位機種で、本体が軽量化され、液晶が明るく見やすくなり、またタッチペンが一回り大きくなるなどいろいろな変更が加えられている。このハードを買うことによって新たに遊べるようになるゲームが増えるわけではないのだが、DSのこれまでの好調ぶりからみても、このDS Liteのヒットは容易に想像できるものであった。

 大方の予想通り、DS Liteは発売日に即日完売。途端に品薄になってしまい、今すぐに手に入れたいのであればオークション(競売)サイトなどで定価より高い金額で競り落とすしか方法がない。・・・と、ここまでを読めば普通にDS Liteが人気商品で、販売元の任天堂としてはうれしい誤算なのだな、という結論になりそうだが、このDS Liteのヒットの裏には、うれしい誤算というよりは悲しい誤算がいくつもある。

 任天堂によるとDS Liteは、年明けのDSの品切れを受けて前倒しで急遽、発表したそうだ。その理由としては、DS Liteの発表が遅れれば品薄状態が今後解消に向かう中でやっとDSを手に入れた人から不満の声が出るかもしれないと考えたからだという。しかし実際は発表から発売までには1ヶ月以上あったが、その間にもDSの品薄状態は続き、依然としてDSがなかなか買えないユーザーからの不満のほうが多いように見受けられた。

 しかもよく考えてみると、商品が品薄であったときにその解消法として通常、上位機種の前倒しでの投入を考えるだろうか。上位機種の投入は前から決まっていたとしても、品薄の状態を見て現行機種の投入増加による品薄解消を優先させるべきではないのか。任天堂はDS Lite発売に際して現行DSの出荷を絞ったということに対しては否定しているが、少なくともDS Liteを作っている時間があったわけで、その分がDSの生産に回されていれば、もう少しこの品薄を解消できたことであろう。

 結果的にはDSの生産を犠牲にしてまでDS Liteに注力することになったのだが、そのDS Liteも、初回の出荷台数は10万台以下(6〜9万台程度といわれている)となってしまった。年末には1週間で60万台を販売した実績もあるDSが、その後2ヶ月にわたって品薄となり、その解消の期待も込めて前倒しで発表したDS Liteが10万台程度の出荷では、オークションサイトが賑わうのは当然である。どうしてこんなことになってしまったのであろうか。

 任天堂は当初、DS Liteを3月2日に3色(カラー)発売しようとしていたのだが、2月24日にそのうちの2色の発売の延期が発表される。理由としては「十分な品質で発売日にまとまった数量を確保するのが困難なため」としている。詳細を調べるとこの「十分な品質で」というのが意外と重要で、生産を行なっている中国の工場において出来上がったDS Liteを見てみたところ、十分な品質ではなかったというのだ。そのせいでかなりのDS Liteが作ったのに販売できない、という事態になってしまったのだという。これにより当初、3月中に100万台程度DS Liteを出荷する予定といわれていたのが、公式リリースでは「45万台以上」となってしまった。DS品薄の解消の優先を怠ったバチが当たったといえば酷になるが、いよいよ品薄のお詫びを出しているだけでは納得できないというユーザーが増えてきてしまうのではないだろうか。

 そもそもニンテンドーDSのこのヒットの要因を簡単に言えば、既存のゲームユーザーばかりでなく、普段はゲームに触れていない人にも興味を持ってもらえるゲームを数多く投入したところにある。つまり、「ニンテンドーDSで初めてゲームに興味を持った」という人も少なくない。そんな人たちが、ゲームショップに行ってニンテンドーDSを買おうとするのだが、どうやら品薄で売り切れているらしい。1ヶ月待っても、買えない。その次に、その人たちは、どうするだろうか。「あ、こっちのほうが面白そうだな」。ゲーム以外のものに興味を持つのである。もともとゲームには一時的に興味を持っただけで、ほかにまた興味のあるものが出てきてしまったら、当然のことながらそっちへ流れていってしまう。水の流れのごとく、ごく自然なことである。

 悲しいことだが、このDSのような急激な盛り上がりは、その反動も大きいと考えられる。ゲーム業界でも、昔なら100万本は確実に売れたようなシリーズ作品が今は50万本も売れない、などという例も少なくない。だからこそ、DS Liteの早期投入によって盛り上がりの継続を狙ったのだろうが、結果的には裏目に出た形となってしまった。このDSやDS Liteの品薄もいつかは解消されるであろうが、そのとき、ニンテンドーDSで初めてゲーム機に触れた人たちは継続的にゲームを楽しんでいるであろうか?また、新規ユーザー向けのソフトで盛り上がったDSの市場は、これまでのゲームユーザーにとっても満足のできる市場であり続けることができるのであろうか?ニンテンドーDSというハードは、今まさに大きな転換期を迎えていると個人的には思う。

 3月11日にはDS Liteの2色(アイスブルー、エナメルネイビー)も発売されるが、こちらも出荷はかなり少ない(2色あわせて10万台弱とのウワサ)ようである。このDS Liteを含めた戦略が今後のゲーム業界にどのような影響を与えるのか、じっくり見守っていくことにしよう。  
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